1000形(B形)客車 |
ボハフ1161 2007年6月撮影 車体をステンレス化する更新工事の施工車である。車側表示灯に注目! |
鋼製の開放型車体を持ち、2軸ボギー台車2組を履いた固定編成客車で、
観光ガイド等にも登場する黒部峡谷鉄道を代表する客車である。
大部分の車両は一般旅客列車に使用され、営業上は「普通車」と称している。 1953年(昭和28年)の初登場から1994年(平成6年)の最終増備車まで長期にわたって製造されており、 近年では車体をステンレス化する更新工事を実施した車両も現れている。 更新工事実施車は現番号に+100とした番号になっている。 製造メーカーは一貫してナニワ工機・アルナ工機であり、更新車体もアルナ工機・アルナ車両である。 |
ボハフ1000形・ボハ1000形 |
名実ともに黒部峡谷鉄道の主力客車であり、7両編成8本分、計56両が在籍する。 編成の両端は緩急車のボハフ1000形、中間はボハ1000形としており、 欅平よりを1号車、宇奈月よりを7号車とするのを基本としている。 各車両の番号はボハフ・ボハを区別しない編成毎の通し番号で、末尾番号が号車番号と対応している。 多くの場合、2000形(A形)客車等と編成を組む13両編成で運用されるが、 1編成のみオール1000型(B形)の13両編成を組んでおり、8〜13号車を名乗る車両(1112〜1117)も存在する。 余剰となる1両(ボハフ1111)は工事用列車に運用されている。 改めて解説するまでもないが、側面は下部にわずかな壁と2本の側柱を持つだけの開放構造である。 また、緩急車ボハフにも車掌室はなく、編成端側の妻面に手ブレーキ等の掌業務用装備を備えているのみで、 車掌乗務時はその部分の座席一列を仕切って車掌席としている。 台車は2軸ボギー台車だが、枕バネが無く、車体重量が側受けを介して台車枠に直接伝わる珍しい方式となっている。 軸バネはコイルバネで、軸箱支持はペデスタル方式、2000形(A形)客車も同じ台車を使用している。 連結器は、他の2軸車が一般に朝顔型と呼ばれる緩衝式連環連結器であるのに対し、 緩衝式連環固定連結器と称する黒鉄オリジナルタイプを装備しており、他の固定編成客車にも装備される。 この連結器は大容量の緩衝装置を持つとともに、同じく同社オリジナルのB型連結環を併用する事で、連結面に隙間作らず連結することができる。 したがって前後動に対して有利であり、良好な乗り心地に貢献していると思われる。 当然のことながら冷暖房や換気装置は装備していないが、他の密閉構造客車と併結することから、暖房電源の引き通し回路を設けている。 また、ボハフから密閉型客車のドア扱いを行う事もできる。 座席は背もたれの無いベンチシートが枕木方向に9列並んでおり、 定員は1列3名×9列=27名だが、ボハフに車掌席を設定した場合は1列3名減で24名となる。 通常は定員以内の余裕ある乗車となるように、乗車整理券を発行しているようだが、多客期には1列4名で36名乗車となる。 近年になり、車体をステンレスとする車体更新工事を実施しており、既に最終増備グループの1081〜1087以外の全車が更新車となっている。 なお、更新車は元番号に100をプラスした1100番台となっている。 |
車内から見たボハフ1000形の車掌席 2007年 5月撮影 欅平にて 車端部の壁面内部には圧力計、放送装置、車掌スイッチなど、車掌業務に必要な機器類が納められている。 車掌席を設定せず、一般の客席として使用する場合には、これら機器類には蓋をして施錠される。 |
趣味的にみたポイント |
1000形(B形)客車は長期にわたる増備と更新工事により、改番や外観の変化がある。 ■ボハフ組込にともなう改番 製造初年は1953年(昭和28年)であるが、緩急車ボハフ1000形が登場したのは1973年(昭和48年)からである。 新製当初は形式・編成等に関係なく登場順に通し番号であったが、 1979年(昭和54年)4月5日付で、現在の固定編成毎の番号に改番された。 ■屋根のポリカーボネイト化(ボハ1014) 3000形(P形)客車(パノラマ車)登場を前にした1986年(昭和61年)4月に、 ボハ1014の屋根板をポリカーボネイト製とする改造が施された。 文献2に同車の写真があり、ポリカーボネイトが屋根の骨組みにボルトで固定されているのがわかる。 なお、1996年(平成8年)3月に鋼製に復旧された。 ■灰皿の撤去 当初は側壁部に灰皿を備えていたが、現在では全て撤去されている。 もちろん全車禁煙車である。 ■更新工事に伴う形態変化 車体をステンレス化する更新工事が行われている事は先に述べたが、 この工事を行った車両は外観に変化が現れている。 ・側面への表示灯設置(用途不明)ただし編成毎に有るものと無いものがある。 ・妻上部のひさし省略 当初は帽子のつばのような形状をしたひさしがあったが、更新車にはこれが無い。 ・ボハフ妻面のジャンパ栓受・栓納と尾灯形状の変化 オリジナルのジャンパ栓受・栓納は、それぞれ個別に設けた車体の張り出しに取り付けられていたが、 更新車では2500形客車のような、車体に車幅一杯の張り出しが設けられ、 この張り出し下部にジャンパ栓受・栓納が並ぶようになった。 また尾灯も大型化され、この張り出し部に取付られた。 なお、車体の表記を見ると、黒部峡谷鉄道ではJR等で言う「栓納」を「栓受」と称しているのが解る。 ■最終増備グループの外観 最終増備グループであるボハフ1081・1087、ボハ1082〜1086は、 現状(2007年)で未更新の唯一の編成であるが、新製時期が1993・1994年と新しく、 他車のオリジナルと更新車の折衷型ともいうべき独特の姿をしている。 ・妻部のひさし無し ・ボハフ妻面の車体張り出し無し ・オリジナルタイプの尾灯 |
ボハフ1071 2003年10月撮影 更新前の姿である。妻面上部のひさし、尾灯等に注目! |
ボハフ1161 2007年7月撮影 更新車の姿 |
ボハフ1087 2007年7月撮影 最終新製グループの姿、オリジナル、更新車と比較すると、両者の折衷型ともいえる姿をしている。 |
車種 | ボハフ1000 | ボハ1000 1957年製まで |
ボハ1000 1974年製以降 |
ボハフ1100 更新車 |
ボハ1100 更新車 |
長 | 7060 | 7060 | 7060 | 7060 | 7060 |
幅 | 1660 | 1660 | 1660 | 不明 | 不明 |
高 | 2250 | 2345 | 2250 | 不明 | 不明 |
自重 | 2.85t | 2.85t | 2.85t | 3.88t | 3.88t |
定員 | 27名 | 27名 | 27名 | 27名 | 27名 |
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